first impression



そのさん





もともと知らない人とでも平気で会話できるし、新しい交友関係を作るのが得意なおれは、先輩の友達の男子学生とも、そのまた知り合いであるらしい女子大生ともすぐに打ち解けることが出来た。
「三上にこんな高校生の知り合いがいるなんて意外だよな〜」
先輩と同じ課題を研究しているらしい内田さんが感慨深げにおれを見た。
「そうっすか?つっても高校の先輩後輩なんですけどね」
「でもほら、三上って優くんと一緒に住んでるんだろ?最初聞いたときはびっくりしたぜ?三上って冷めたことろがあるじゃん?自分は自分。他人は他人って一線を引いてるようなさ」
さすが先輩のダチを名乗るだけあって鋭い観察力だ。
高校在学中の先輩は、まさにそんな感じだった。孤高の人で、おれらが話しかけるなんてとんでもなかった。

でもほんとは全然違う。優しくて面倒見がいい。まあ心を許した人に対してだけなんだけど、それは。
「崎山さんって・・・いつもあんな感じなんスか?」
あいつのことなんて話題にしたくもなかったけれど、これからのことを考えると少しでも情報を仕入れたくて、先輩と優と三人でなにやらワイワイ騒いでいるオトコに視線を送った。
「崎山?あいつ面白いだろ?見かけは優男風だけれど、結構あれでいてさっぱりしたいいヤツなんだ。三上といちばん仲いいから、友樹くんもすぐに仲良くなれるさ」
そんなのお断りだ!と心の中で叫びつつ、おれは愛想笑いを浮かべていた。
それから、女子大生のお姉さま方に、男子高校生の生態についていろいろ聞かれて話に夢中になっていると、崎山に連れられて上流のほうへと向かう優が、視界の中に入ってきた。
何だ何だ?優、そんなヤツについていっちゃあダメじゃないか!
ちょっと小用と断りをいれ輪を離れ、ふたりを追おうと上流へと向かいかけてふと思う。
いつまでも、おれが優の世話を焼いていていいのだろうか?つうか三上先輩は?
先輩が座っていた場所にはビールの空き缶が散乱していた。自棄酒かよ、ったく!
周辺をうろうろして、はたと思いつき、車を見に行くと、案の定後部座席でゴロンと横になっている先輩を見つけた。
「三上先輩っ、三上先輩ってば!」
揺り動かしても叩いてもピクリともしない先輩の、頬をぐいっと抓り上げた。
「ってえな!あにすんだよ!」
眉間にしわを寄せて睨みつける先輩に、おれは情けなくなり、怒鳴り声を上げた。
「こんなとこで、何寝てるんですか!」
いまや、みんなの憧れだった孤高の三上先輩の姿の欠片もない。
やきもちのあげく、飲みすぎて寝てしまうなんて・・・

あぁ情けないったらありゃしない!
「大変っすよ!優が崎山さんにどっか連れてかれた!」
優の名前を聞いて思考回路が動き出したか、慌てて起き上がると、車を飛び出していった。
やれやれ・・・ほんっとに世話やけるわ・・・
何だか疲れてしまって、おれは酒臭い車内を換気するためにドアを全開にすると、ごろりと横になった。
あとは・・・先輩、自分でなんとかしてくださいよ・・・?







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